Bar キッチンシンク

週末、家族で買い物に出かけて酒瓶が並ぶ区画に差し掛かる。どちらからともなく「飲みますか」と目顔を送る。レジ袋を2つほど積んだショッピングカートの鼻先が向いた先が、その応え。

ここ最近、週末に細君とあらたまって飲むようになった。しかし翌日が休みであっても油断できない状況にある。
休日に限って、子供らは目覚まし時計を必要とせずに早朝から目を覚す。容赦なく寝室のテレビのスイッチを点ける。アニメと特撮番組の谷間で、猫と共に、汗水たらして練習したかのように腹が減ったと華麗なハーモニーを奏ではじめる。自ずと深酒したことを後悔したくなる。

子供らが確実に記憶の再構築をし始めるのは22時以降となる。最初のうちはリビングのソファーに身体を沈めてゆっくりと飲んでいた。
飲み始めると、酒やロックアイスや水などを、そのたびに台所まで取りに行かなければならなくなる。リビングから台所までは大した距離ではない。ちょっと無理すれば、チョキで勝って "ち・よ・こ・れ・い・と" で行けるぐらいの距離だ。しかし酒の力によって一気に、サンペドロ・デ・アタカマからサンチアゴに向かう距離ぐらいになる。過酷な道程を、より安全に進むための術として じゃんけんで負けたほうが台所に向かうこととするのだが、単純で明快な取り決め事に限って、体内にアルコールが吸収されると簡単に破られる。

限られた時間の中、余計なことで逆にストレスを溜めたくないので、自然と台所のシンクの前に椅子を二つ並べるようになった。換気扇のライトがいい雰囲気を醸し出す。あくまでも偏った見方をすればの話だ。

細君は除湿機みたいに大きくて、リンゴのマークが側面に描かれたコンピュータをあらたに購入したらしかった。私のiPod touchWifiの接続先が、ある日突然に AirMac Express ベースステーションとやらに変わったことでそれを知った。このベースステーションとやらは、iPod touchからの出力を一手に引き受けてくれる男気のあるなんとも頼もしいヤツだ *1。おかげでオールナイトニッポンをBGMせずに済んでいる。

会話のほぼ8割方は子供らのこと。
キッチンシンクの上に並べたグラスの中で氷の角がアルコールに溶けて丸くなるような話が残りの2割。

キッチンのシンク(Sink:流し台)の上で、お互いのシンク(Think:思考)をシンク(Sync:同期)させる週末のひと時。ただ、ごく稀にキッチンシンク(Kitchen sink:プロレス技 *2)を食らうこともあるので注意が必要。

*1:ベースステーションにアンプ内臓のスピーカーを繋いである状態

*2:相手のみぞおち目がけて自らの膝を突き刺す技である。ヒットさせる際自らの体が少し横に流れるところが格闘技の膝蹴りと違う