なで肩の狐 − 花村萬月

なで肩の狐 (新潮文庫)
花村 萬月
新潮社
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元ヤクザの木常は、神保町にある呑み屋のオヤジだ。ある日、現役の徳光からアタッシェ・ケースを預かる。二億円ほどの札束。組に黙って稼いだのだ。そいつは、とんでもない厄ネタだった。一週間後、さっそく凶刃に襲われる。幼なじみの女とその娘、舎弟の元力士を引き連れ、木常は、北辺の地を目指した。徳光の最後の願いを叶えるため。穢れなき雪原の中、壮絶な闘いの幕が上がる。

花村萬月はじめました。

Amazonさん家に御用がございまして、玄関先を伺ったところ「これにも注目」と書かれた表札の下に「なで肩の狐」という本がご丁寧に並べて御座いました。
私、背丈(たっぱ)は男性として平均値を示す程度なんですが、その躯には不釣合いと表現するしかないモノをバランス良く首下に従えております。なにかのきっかけで誰彼無しに並んで立つことがあると大概「えっ!○○○さんって思ったほど背が高いわけじゃないんですね」と驚かれることもありますし、一般的に定説化している肩幅=水泳(かっぱ並みの泳力)を、肩幅=金槌(ある意味ハンマーヘッドシャーク)であることで覆し、これまさに沈んだ顔、浮かない顔にすることもしばしばございます。そんな皆様の様々な期待をことごとく裏切る、いわば「はったり肩」を持つ身として、「肩」という単語を無意識の自然と拾ってしまうようです。

と、いつものように無駄に長い前置きとなってしまいましたが、花村萬月という作家は前々から気になっていたこともあって、目当ての本といっしょに購入するに至った次第で御座います。

いい意味で「粗削り」の文体にページをめくる指が惹かれました。
たぶん「この手の作品」が好きか嫌いかできっちり二分しそうな作品。私は期待していなかった分、十分に楽しめました。

主人公の元ヤクザ「木常(キツネ)」の暴力と優しさの二面のバランスが魅力的です。男女ともに惹かれる男の危うい雰囲気の魅力を十分に理解して表現していると思いました。ふとしたきっかけで兄弟分となる元関取(十両)の蒼ノ海とのやり取りが良いです。ジャンル的に「ハードボイルド」ではなく「ハードボイルド的」な作品だと思います。

「匂い、だよな」
「どういうこと?」
「人を好きになるってことは、相手の匂いを好きになることなんだ」


読書つながりで、もうひとつ。
2007年05月食道癌のため死去してしまった藤原伊織の代表作「テロリストのパラソル」(史上初の第41回江戸川乱歩賞・第114回直木賞受賞作)。藤原伊織にハマるきっかけになった大好きな作品です。1996年フジテレビ「金曜エンタテイメント」でテレビドラマ化されてることを知りましたが正直あきらめていました。
...って、あらっやだ!奥さん!奥さん! BSフジ ch181「第41回江戸川乱歩賞受賞作『テロリストのパラソル』」萩原健一根津甚八ですわ!すっかり予約録画忘れてあせってますわ!そんな本日出勤日。
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