背負っているものをあらためて感じるとき

その頃、母は映画が好きだった。
私は映画館が好きだった。映画館のその雰囲気がたまらなく好きだった。

母は窓口でチケットを買うと、三つの岩に荒波が砕け踊るシーンですでに飽きてしまう我が子に、普段ではありえないほどのお菓子を買い与えて「眠くなったら無理しないで(寝ても)いいからね。無理することはないからね」と、暗示にかけるように言ってから、仄暗い空間に身をゆだねたものだった。

当時、母といっしょに観た「大人の映画」というジャンル中で唯一、記憶に残っている映画があった。しかし題名などわからないまま今に至っていた。
唯一、断片的だが記憶に残っているシーン

  • 映画館のロビーに男が二人。
    • 映画館出入り口の上に飾ってある額縁に入った古ぼけた写真の前。
    • その男の一人は寅さんの渥美清?。
  • 大きなホールの舞台の袖、舞台幕の影からピアノ演奏者を覗いている男二人。
  • 鉛色した雪交じりの空の下、波際を白い服を着た親子が歩いている。

何度か思い出して、母に聞いてみても映画のタイトルまではたどり着くことはなく、その当時に観た「絶唱(山口百恵 主演)」の感想をただ延々と聞かされるだけだった。

映画好きの友人や知人らと話す中でも、結局は映画のタイトルまではたどり着くことは出来ずに35年ぐらいその映画に片想いしていた。

今年の春先に細君の演奏会の準備を手伝ったときのこと。
舞台の袖で細君のリハを覗いていたとき、偶然に記憶の端っこを踏んづけた。
舞台の袖から客席をバックにステージを見ているシーン。
ステージ上では大岡越前がピアノを弾き、舞台の袖から覗いているのはGメン'75。
ともにTBS系だが、それはどうでもよいこと。
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砂の器 デジタルリマスター 2005 [DVD]
松竹 (2009-09-26)
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旧作7泊8日80円に背中を押されてデジタルリマスター版を迷わずレンタル。

片想いというのは、想う年数が長ければ長いほど残念な結果になることが多い。青豆と天吾の場合は例外事例。
しかし今回の片想いは見事なまでに(いい意味で)裏切られた。

松本清張原作、当時の時代背景と俳優陣、「宿命」(「生まれてきたこと」「生きていること」)というテーマと、そのピアノ協奏曲。

後半一時間の畳み掛けるような展開は暴力的に涙腺を刺激する。
犯人である加藤剛のコンサートでピアノ協奏曲「宿命」をバックに、捜査本部での丹波哲郎による捜査報告をナレーション代わりに、犯人の壮絶ともいえる過去が明らかにされる。
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ハンセン病で村を追いやられ全国を流浪する父と子。
忘れかけている日本の風景。
そして出会いと別れ。
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ハンセン病患者の父を演じる加藤嘉の演技が素晴らしいの一言に尽きる。
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主演の子供と年齢が近かった頃に一度目の鑑賞。二度目は父という立場になってから鑑賞。色々と考えさせられた日本映画の名作。
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うまくまとめれなくて6月から下書きに眠らしていたのを、リハビリのために起こしたけど、やっぱりまとめきれない ...orz