Sundays and Goldfish

去年、日差しがじりりとしてきた時分、彼がドジョウを家に連れて帰ってきた。
さてさてどうしたものかと、急いで45cmの樹脂製水槽に水を入れて、一日寝かして飼育することにした。
ちょうど、点いていたカートゥン・ネットワークを観て、その容姿風貌から「レッグガー」とお父さんは密かに命名した。
レッグガーは食欲旺盛で見る間に二倍ぐらいに成長した。

震災の一週間ぐらい前に、レッグガーは水槽容器の中から忽然と姿を消した。
水槽まわりを隈なく探索したが見あたらない。掃除機の音にも もはや反応しなくなった22歳の老猫が、100cm頭上の動く生物に興味を抱くはずはないし、それ以前に飛び上がることは出来ない。
いまだレッグガーは行方不明。
エアポンプが、ため息みたいにぶくぶくとあぶくを吐き出して、水面をただただ揺らす水槽がひとつ。

余震もだいぶ落ち着いた昨日、日曜日。
彼と彼女を連れて近所のペットショップに出かけた。
ゲージの中で、これ見よがしにお腹を見せながら、ごろごろ転がる黒い子猫に、彼女がきゃきゃっと声をあげて夢中になっているのを横目に、彼と金魚の水槽前で腕組しながら、ヒレの形が綺麗なコメットと、愛想のよさそうな顔した丹頂を二匹選んだ。
レジスターの後ろに、「133cm」とマジックインキでマーキングしてある柱を目にして、あえてオーナーと込み入った話は避けた。

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彼と彼女が、名前決めに白熱した議論を繰り返す中、お父さんはスタスキー(コメット)&ハッチ(丹頂)と命名した。赤いグラントリノがほしいところ。