灰色の水曜日

7465247_537a8b99a0_o

彼女が先週の土曜日に38度発熱する。翌日曜日には町内の子ども会で6年生を送る会があった。彼女は日曜日の朝には熱もほぼ平熱に戻っていたが、大事を取って彼を一人送り出した。10分程経って彼は無言で帰宅すると、ドラゴンスクリューから足4の字固めを一時間間違えて送り出した父に見事に決めてくれた。

月曜日の朝。普段、子供らは約1kmほどを歩いて通学しているが、その日は「はなかっぱ」が終わる頃に車に乗せて送って行った。
帰宅すると18時30分からのピアノのレッスンのため、細君と彼女は留守なのだと思った。ただいまの挨拶に対して右足へのローキックから、左の脇腹へ前蹴りと回し蹴りの中間の軌道で三日月蹴りを放ちながら、「○○○(彼女)がゲロってママと病院に行ったよ」と右足をキャッチされてアキレス腱固めにタップしながら、彼が悲鳴に近い声で言う。
「ゲロった?」
「うん。あのねぇスゲェ咳してたら、そのうちにゲポっとして、喉もヒューヒューしてて喘息の発作かもしれないって病院に行った」
そのやり取りが終わった頃合で、奥の台所で夕飯の支度をしている義母が「学童(保育)から帰ってくるときからお腹が痛いって言ってたのよ。今日はなにかの発表会?だか、催し?があってハッスルしてダンスを踊ったとかねぇ〜。そのせいかも。元気なことは元気だったけどねぇ〜」と彼に目顔で同意を求めながら教えてくれた。
彼女は細君がそうであるように喘息持ちだ。小さい頃に何度か喘息の発作が出たときの嫌な感じを思い出した。

夕餉の食卓で彼とイカのくちばしを取りあっていたら、じょいふる(いきものがかり)を口ずさみながら、彼女と細君が帰ってきた。今日踊った曲は自ずと理解できた。
「なんかねぇ吐いたら楽になったみたいで、この通り」たしかにその通りだった。「喘息のヒューヒューも病院に着いた頃には大丈夫だったし」と困惑顔の細君。
翌日あらためて診断とのことだが、とりあえず切羽詰った状況ではないようなので、ひとまず安心した。

細君と彼女が二人並んで夕飯を食べ始めた。そのうちに彼女が体を痒がりはじめる。小さな白い背中に降り始めたばかりの雨粒に似た赤い湿疹。「病院に行っている時は出てなかったのに、なんでぇ?」と細君。
彼女は細君がそうであるようにアレルギー体質。それは「くるみアレルギー」。
細君と義母の2人して経験上での診断を下そうと、議論しているもとで黙々とご飯をぱくついている彼女。
茶の間からテレビの音に負けじと「今日、学童(保育)でくるみ入りのケーキとお菓子出たよ」と彼の声。「○○○(彼女)も食べたっけよ」
「あんた、学童(保育)にくるみアレルギーの事言ってないの?」「入所アンケートに書いてあるし、先生も知ってるはずだけど」とやり取りをしている間に、学童保育で配られて食べ残したお菓子を彼が差し出す。
そのお菓子を細君は無言で口にして、しっかりと咀嚼した後に「くるみバリバリ入っているしぃ」
アレルギーの症状で全身蕁麻疹は勿論のこと呼吸器症状も出るらしいから、牧瀬里穂じゃなくてもヒューヒューしちゃうらしい。ため息の月曜日。

何もなかったように 雲は流れていくさ 灰色の水曜日よ。

IMG_0009