フランキー・マシーンの冬 − ドン・ウィンズロウ


フランク・マシアーノはマフィアの世界から足を洗ったつもりだった。地元サンディエゴで釣り餌店をはじめ複数のビジネスを営むかたわら、元妻と娘、恋人の間を忙しく立ち回り、“紳士の時間”にはサーフィンを楽しむ62歳の元殺し屋。だが“餌店のフランク”としての彼の平和な日々は、冬のある一日に突然終わりを告げる。過去の何者かが、かつて“フランキー・マシーン”と呼ばれた凄腕の存在を消し去ろうとしていた―。

「犬の力」ドン・ウィンズロウの最新作。
「犬の力」読了後、これ当たり前と書店の陳列棚に最短で向かった。「犬の力」のあとがきによると、本書「フランキー・マシーンの冬」は、マフィア役はもうやらないと公言していたロバート・デ・ニーロ主演で映画化が決定しているとのこと。ちょっと調べると、監督は「ヒート」「コラステル」「マイアミ・バイス」「パブリック・エネミーズ」のマイケル・マンで2013年全米公開予定らしいことが、その理由。

そんな前情報もあってか、忙しなくめくる頁上で活躍する主人公フランク・マシアーノは、ロバート・デ・ニーロそのものだった。

冒頭、結構な頁を使ってフランクの”生活の質(Quality of Life)” にこだわる生き方が描かれている。

「これは、”生活の質”の問題なんだ」
そう、生活の質。けさ、フランクはその言葉を思い出しながら、コーヒー豆が蒸される香りを楽しみ、やかんを火にかける。生活の質とは、日々の些細なあれこれにまつわること、こまごました用事をそつなく、そして正しくこなすことだ。

以前、流れていた某企業のCM。「イチローはなぜ同じ毎日を繰り返しているのに未来を作れるのか」ナレーションの後、「確かな一歩の積み重ねでしか遠くへは行けない。通信の未来も確かな今日の積み重ねで作られている」という、イチローの言葉をふと思い出した。

「犬の力」より、軽妙なタッチで、すいすいと心地良く読めた。読めたから、尚更このヴォリュームで上下巻必要ですか?な感じは否めない。

自身の“生活の質”について考えさせられた作品。