犬の力(上下巻) - ドン・ウィンズロウ



メキシコの麻薬撲滅に取り憑かれたDEAの捜査官アート・ケラー。叔父が築くラテンアメリカの麻薬カルテルの後継バレーラ兄弟。高級娼婦への道を歩む美貌の不良学生ノーラに、やがて無慈悲な殺し屋となるヘルズ・キッチン育ちの若者カラン。彼らが好むと好まざるとにかかわらず放り込まれるのは、30年に及ぶ壮絶な麻薬戦争。米国政府、麻薬カルテル、マフィアら様々な組織の思惑が交錯し、物語は疾走を始める―。

昼休み、食事以外の45分弱はたいていの場合読書に割りあてる。この時間を急かした本はなんとなく数えることができるが、この上下巻は食事も急かした作品。最近だと「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」以来。読了後に「ミレニアム2 火と戯れる女」を求めて書店に行った際に「このミステリーがすごい!海外編」に惹かれて手にとってレジに向かった作品。(ミレニアムは楽しめたが登場人物の多さと聞きなれない人物名に疲労困憊気味だったのは正直なとこ)
裏切りにつぐ裏切り、そして裏切りの果ての報復という殺戮と暴虐。
めくってすぐの巻頭見開き2頁におよぶ主な登場人物は容赦なく次々と消えていく。
思わず感情移入してしまったヘルズキッチン育ちでふとしたきっかけで、あれよあれよという間に殺し屋となってしまったカランが生き残ることを祈りながら、上下巻を数週間かけて1000頁をめくりあげた。
最近では珍しく是非映画化してほしいと思った作品。


わが魂を剣から解き放ちたまえ。わが愛を犬の力から解き放ちたまえ。